長崎県有害図書類指定問題について(2)

担当者との会合の結果のご報告

4月10日、「マンホール(1巻)」についての問題表現が具体的にどの部分であったのか、 長崎県こども未来課(*1)の担当者に直接話を伺う機会がありましたので、ご報告いたします。

「マンホール(1巻)」の問題点

長崎県による漫画作品に対する有害図書類指定は、例えば登場するキャラクターの主張や、物語に通底するテーマ性などの内容面が問題とされることはなく、 あくまで作画上の表面的な判断に基づくものであるということが分かりました。

長崎県こども未来課では、担当職員が県内の書店で有害指定候補の図書をサンプルとして購入し、条例の認定基準に基づき有害図書類の指定案を作成します。
対象図書の中で「有害」とされたページに付箋を貼り、総ページ数から割り出した「有害率」なる数字を指定案に記して有害図書類指定を判断する際の一つの目安としています。

「マンホール(1巻)」では、210ページのうち27ページが「有害」なページであると審議会に報告する「有害率」の計算の際に指摘されました。 具体的には、003,004,005,006,007,008,012,013,025,027,029,031,033,034,077,078,079,080, 083,096,108,125,145,183,184,203,208ページが「有害」とされています。 「マンホール(1巻)」をお持ちの方はご確認ください。 このうち、著者としていくつか「これはおかしいのではないか」と疑問に思える点がありましたので、指摘したいと思います。

疑問点その1

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004,005,203ページの描写は、単に泥が付着した男が歩いている、003,208ページの描写はマンホールの蓋を開けて腕を伸ばしているという表現に過ぎません。

特に004,005ページなどは泥の付着した手足が描かれているだけのものであって、これを「有害」と指摘することは、全く意味のわからない話に思えます。 仮にこの泥の付着を「流血表現」と誤解されたとしても、物語を読み進めていくうちに、この人物がどのような場所を歩いてきたか、誰にでも理解できるように描かれています。

長崎県の青少年は、泥の付いた男が街を歩いているのを見かけると、著しく粗暴性・残虐性を刺激され、犯罪を誘発させられてしまうのでしょうか。

疑問点その2


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083,125,145ページの描写は、片目が寄生虫に侵され、頭にミミズ腫れの浮かんだ人物の姿が描かれています。 これは確かに一部グロテスクさを強調した表現ではありますが、青少年の粗暴性・残虐性を著しく助長するものかと言われたら、大いに疑問を感じるところです。

作品内に現れる寄生虫の描写に、読者が生理的な嫌悪感や恐怖を感じたとしても、それは犯罪の助長とは全く関係ないはずです。 もしもこのような描写を「有害」とみなし表現規制をするのであれば、そこには十分な根拠がなければならないと考えます。

また仮に、ミミズ腫れの表現が「有害」だとするならば、なぜ他の同じようなページは「有害」とみなされないのでしょうか。

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具体的には072,177,193ページなどは、ミミズ腫れの表現がありながら有害性なしと判定されています。 両者の違いを考えますと、キャラクターが太っている、鼻水を垂らしているという程度の違いしかありません。 あるいは長崎県は、太った男が鼻水を垂らすことが有害だとお考えなのでしょうか。

雑感

以上のように、有害図書類の選定について、長崎県では、漫画表現について理解力の極めて乏しい人物が、一方的な主観に基づいて根拠不明の「有害」判定を行っていることが明らかとなりました。 審議会は、この「有害」判定も考慮して有害図書類の指定をしていることから、一つの目安であるとはいえ、有害図書類の指定の判断に与える影響は大きいと考えられます。 体に泥が付着している姿を描いただけで「有害」とみなされるのであれば、長崎県では農作業の風景を描くだけでも保護者の注意が必要なのでしょうか

有害図書類指定の指定案が、いかにずさんな体制で作成されているか、お分かりいただけたかと思います。 続く記事では、指定案に基づいて有害図書類指定が確定される審議会(長崎県少年保護育成審議会)がどのようなものか、実際に現地で見て参りましたのでご報告いたします。

長崎県有害図書類指定問題について(3)



(*1)長崎県福祉保険部こども未来課
https://www.pref.nagasaki.jp/section/kodomo-mi/

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